アルネ小濁「制作委員の山崎さんが提供してくれた、山葡萄を小さくしたようなはっぱ。「これミヤマツっていうんだよ」
「ミヤマツ」というものに始めて触れたのは4年も前、地元ならではの天ぷら材料を探していた時だ。(市民活動団体の集まりでケータリング:妙高元気にしよさね。)
生えている所をみたわけでもない。山葡萄そのものもよく解らない。私にはまるで未知の食材だった。
人に尋ねても、ともかくあやふや。
「甘くて、子供の頃よく食べた」「あそこに大きな木があった・・」そんな思い出話ばかりで、正確な品種を特定出来ずに半ば諦めていた。(ねおかんぱーにゅ南部 人コーナー;山菜名称の標準化…断念!?)
ある時、県内の、ペンネーム”たあさん”というかたからメールをいただき、自分も昔みやまつを食べた。と。
「昔は沢山あったのに、すっかり見なくなった」というのだ。
その時を境に、いつか自分の手で取り戻したい!という想いが膨らんでいった。
灯台下暗し?蕎麦打ち仲間で、野菜でいつもお世話になっている近所の中嶋さんが「ミヤマツなら家に成っている。」というのだ。 びっくりして、始めて実を口にしたのが昨年の事だった。
ぶどうパン
私はなんといってもぶどうパンが好きである。
日本人はどうやら甘くてふわふわパンを好むらしい。田舎のパンやさんでは諦めているが、私は、トーストするとガサガサで、ザクッとしたイングリッシュブレッドが大好きなのである。
レーズン入りのイングリッシュブレッドをサラマンダー(上火グリラー)でカリッと焼いて、有塩バターをさっとぬり、もう一度サラマンダーでグヂグヂとやったものは、この世の食べ物の中で1、2を争うくらい旨いと思う。
レーズンは干しぶどうの事だが、パンの歴史をさかのぼると、ブドウについている天然の酵母を種にし発酵生地を作って焼いたことだと本で読んだ。もう30年も前の話で、今のようにだれでも知っている「天然酵母のパン」のようなものが無かった頃だ。
私はそんな文化的な話に感化されやすく、ブドウが一緒になったパンが「小麦発酵文化の象徴」みたいに思ってしまったのが先か?本当の好みなのか、その辺も解らなくなってしまっている。
ともかく、ぶどうパンが好きだ。
見よう見まねでレーズンを沸かし、天然酵母のパンを焼いてみたこともあるが、実はそれほどの感動を得られなかった。どうもリアリティに欠けるのだ。それくらいなら、ライ麦のサワー種のほうが美味しかったし、麹が失敗してアルコールっぽくなっちゃった時のほうが嬉しかった。どうせやるなら、近くの山にある天然のブドウでやりたい!そう思っている。
小濁のミヤマツ
なんだかんだで、昔はいっぱいあった。というばかりの小濁情報もあてにならず、中嶋さんにすがる思いで増殖を依頼した。
挿し木、実生・・。なぜなら、みんなで味わいたいからなのだ。
みんなの住む近くの里山にはこんな素晴らしい財産があるということを伝えていかなくてはいけない。これは私の使命。
春の失敗は残念だったが、それで諦めたりしょげたりすることは全く無い。(ますますやる気!…ミヤマツ失敗して)
簡単に上手くいくことなんて全然面白くない。
アルネ小濁事業は市の助成金をもらっているが、お金をもらうためではない。しゃかりきに生きている生命がいっぱいあることを知ってもらうためなのだ。そしてそれを育む水や大地、それは地域そのものではないか?
先ずはやってみることから
秋になった。親木からなった貴重なミヤマツの実を譲ってもらうことになった。
先ずは絞って酵母を培養しよう。皮についている酵母を落とさないようにさっと水洗いして皮をしごくようにジュースを絞る。はちみつをひとたらしして瓶に詰め、これから毎日ゆすってやる。
「うまくいくかな、まただめかな・・、だめでも来年こそは!」
ゆっくりと、はるか彼方にある目標に近づいている。