小濁で作っている菊をいただいた。これ。
今のお年寄りが若い頃、小濁では「菊のり」というものをつくっていたそうだ。海産物の”板海苔”ご想像いただきたい。
菊の花先をちょんちょんとつんでから、花びらを萼が残らないように丁寧にとり、煮たった湯でざっと茹でる。広げてさます。
想像だが、菊のりを作るには、ざるですくって平らにならしてからゴザのようなところにひっくり返してあける。そのまま天日乾燥させる。すると、海苔のような板状の乾いたシートが出来上がる。
ざるは平たくて丸いものがいいはず。よって、出来上がった菊のりは、黄色い丸いシートだったろう。なんとかわいらしいことか。
昔のことだから、12枚とか一束にして縄かなにかで縛って流通したのではないか?
出荷した菊のりはというと、関東だか関西だかの料亭に行ったという話を聞いた。
乾燥した菊は湯で戻すのだろう。酢の物や和え物、焼き魚の添えにしたかもしれない。
今の農家は、もっぱら冷凍で保存している。いくら茹でたてが香りが良いとはいえ、菊をおかずに毎食過ごすわけにはいかない。
新潟の地域産品としての「かきのもと」は有名である。近年知ったのだが、他県では馴染みが薄いというから、昔から身近にあったものとしては”へ〜え?”と思ってしまう。かつ、黄色い菊をあまり食べないらしいのだが、私はどちらかというと黄色い食用菊のほうが馴染みが深かった。(写真左:黄色い食用菊、右:かきのもと)
食用菊はこの時期スーパーでも見かける。生のものがちゃんと安価で出回る昨今。
地元のこれらの食用菊は、苗を買うのでも、種を撒くのでもない。昨年作った菊から伸びてきた新芽を挿し木して苗を作り繋いでいる。在来といえば在来だが、今はいろんな種類の食用菊が簡単に通販で手に入る時代。新しい品種を楽しむ農家もある。
食べ物がたくさんある現在は、好んで菊を作って食べる人も少なくなっているだろう。季節にちょっと食べればすむものかもしれない。それに出荷もすることもなくなった今では、自家用でなぜにこんなに大量に作るのだろう?と疑問に思うこともあるが、生活の風習のようなものと理解している。
この菊の処理。実は、ゴミが入らないように、虫が入らないように、と注意が必要で手間のかかる作業。地域の文化や歴史、人の手間に感謝しながら、ありがたくいただくとする。