2010年9月11日土曜日

食という商品のデザイン

 

ファミレスやファストフードで「あれ?こんなもの頼んだっけ?」と思った経験はないだろうか。
歳のせいではなくて(笑:

デザインや広告の仕事をしていると、コピーやDTP技術で、いかに商品をアレンジできるか解る。最近は直売所に野菜を出してる一般の農家さんもそんなテクニックを磨いてきている。デザインで選ばれる事を身にしみて知っているからだ。
東京の浅草にプロの料理人や飲食店関係者が集まる商店街がある。通称「かっぱ橋道具街」。街場のホームセンターや、生活雑貨の店などでも安価で豊富な品揃えがあり要を果たすようになったが、販売員の経験や専門的なアドバイスが聞ける点は、まだまだこの商店街には他と一線を画すものがあるように思う。
そんなかっぱ橋で一昔前、外国人観光客にウケるとニュースになった「食品サンプル」。昔の食堂の店先のケースに必ずと言っていいほど置いてあった。私たちは単に「サンプル」と言ったものだ。サンプルは徐々にリアルになってきたが、作り物と解っているから悪気がなさげ。むしろ茶目っ気がにじみ出ていた。

昔のサンプル。今は写真メニューに他ならない。
大手ファミレスチェーンはこの写真メニュー作りが見事である。背景画像の使い方。飾り罫やアイキャッチ、コンピュータの専門ソフトを巧みにあやつり店のイメージにピッタリ合わせたパーツを感じよく配置している。
色使いは最も神経を使うところではないか。
食欲をそそる赤。高級感の黒。涼し気な水色。新鮮な印象の緑・・。よくもまぁ、こんなに几帳面に並べたなと思わせる万能ネギ。
和食は目で食べると言わんばかり、消費者の潜在意識に訴えそうなデザインのための料理っていったいどうなんだろう。と逆に疑問に思う事もある。
そして、いざ料理が運ばれてきた時のギャップに戸惑うこともしばしば。想像とあまりに違うのだ。食品サンプルと違うのは、現場のすぐ隣に証拠もあるし。

カップメンに、スナック菓子にも似たような思いがある。色やサイズ、質感にシビアな洋服のカタログショッピングだったら即クレームだが、食べ物はちょっと違うようだ。なぜなら、消費者はパッケージデザインにそこまで期待していない。写真メニューは”主観に頼る味”を伝えていないからきっとセーフなのだ。

スクリーンショット(2010-08-02 20.20.55)

最近、アイデンティティのデザイン(PIE BOOKS)という本と、全国の地域ブランド戦略とデザイン(PIE BOOKS)という本を手に入れた。地域を考えるみんなでシェアするためのもの。
商品の良さを確立しながら、ブランディング(デザイン)することの意味に目が向く、これらの本は、

「ただ手にとってもらえばいいというものではない。」「いかに、消費者の信頼と商品をつなぐことができるか。」「作り手にとって"ブランドアイデンティティ"(◯◯がそれである所以)がいかに大切なものなのか。」を学ばせてくれる。地域のブランド化に役立つなら上代●万円は決して高いものではない。(「街学び資料室」開催 in つながりまーけっと 8/7

餃子のメタミドホス混入事件や、食肉業者のひき肉偽装問題は記憶に新しいが、「食品の安全」は日々のテーマとなってしまった。
トレーサビリティに生産地表示義務。10年前はこれほどまで神経質だったろうか?
大量消費のフードビジネスの功罪は認める。それはそれとして、正反対の価値観を忘れないようにしたいと願う思いである。
食べ物は多様化したように見え、次から次へと情報が与えられる。質も量も満足し、目や舌も肥えて来たかのように感じているかもしれないが、それだけに、ホンモノを正しく伝え、本質は何か見極める研さんが必要な現代のはずなのだ。次の時代はどうデザインしていけるだろう。

 

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